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開発者インタビュー

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多品種小ロットに特化したフライス盤を製造する、フライス盤のパイオニア、山崎技研の横山開発部長にお話をお伺いしました。山崎技研は独自の技術開発を行い、平成5年発売のYZ-8CRをきっかけに、「次世代汎用フライス盤」という全く新しい概念・機能をもったフライス盤を世に送り出しています。「次世代汎用フライス盤」の開発のきっかけと、物作りに対するこだわりを開発部長にお伺いしました。

なぜ、多品種小ロットのフライス盤にこだわり続けているのか
実は山崎技研も、現在の多品種小ロットのフライスを主力商品にする際、大きな岐路にありました。うちのフライスは元々、フライス盤とボーリング盤の複合機でした。汎用機が売れていたので、NC機を作る必要がなかったんです。
当時私は、製造部門で組み立てをやっていたのですが、何でも知りたがる性分で、開発のお手伝いとかもしていたんですね。
そこそこうちの機械が売れていた時はそれで良かったのですが、不況期に売れなくなったんです。それで激しく在庫が余るようになって、厳しい局面に立たされました。
前後して、製造に席を置いていた私が、急遽、お客様のところへ納品に行かなければいけない事があったんです。営業がみんな展示会に駆り出されてしまって、お客様に納品出来ないということで、私がお客様のところへ行きました。
お客様に直接、機械についてお伝えする初めての機会だったんです。そこで、生のお客様の声を聞きました。開発に大きく関わって行く初めてのきっかけです。
お客様に機械の説明をしていた際、「難しいね」と言われたんです。それを聞いた時に、私は自分たちには扱い慣れたものでも、お客様が簡単に扱えないものであれば、長く使って頂けないのではないかと、不意に危機感を覚えました。
優しい機械を作りたかった
社内で会議が開かれた際に、私はお客様と接した時に感じたことを正直に伝えました。そして、「山崎が他のメーカーと同じようにNC機を作ったのでは、先が見えている」と発言をしたんです。まだ私が若過ぎたので、意見は聞いてもらえませんでした(笑)。しかし、何人かの上司に、「出来るところまで自分でやってみるといい」と言って頂いて、開発の機会を与えてもらえました。当時、鋳物や部品は不況のおかげで余っていたので、余った備品を組み合わせてモデリングしました。
お客様に直に頂いた声もさることながら、当時大手が汎用機の制御盤を作ろうとしているのを知りました。それもまた大きな脅威でしたね。このままでは生き残れないと思い、大手に先んじて開発を急がなければならないと思ったんです。
なぜなら、このまま行けば日本中に、職人さんが扱い難い、メーカー都合の機械が溢れてしまう。その前に何とか、扱い易くて、職人さんに優しい機械を作りたかったんです。
顔の見える機械作り
私の構想は元々、会社の戦力外でした(笑)。若かったからいい意味で期待されていなかったんですね。だから、自由に発想して、自由に改良を重ねました。  山崎技研は皆がいろいろな仕事を持ち回ります。ある意味風通しの良い意見交換がしやすい環境です。部門はもちろん分かれていますが、皆がお互いの仕事を兼ね持っていて、お互いを補えるような環境なんです。
だから、皆が使えるものを作らなければいけない。私が最初に開発を手掛けたYZ-8CRも、
「Aさんにはいいけど、Bさんには難しいかもな。Bさんにも扱い易いものにしよう」
そう言った感じで改良を重ねました。
うちは自社製品を製造にも使っています。だから、自分たちの商品の良いところ、悪いところを熟知しています、自分たちが使って良いものは、お客様にも喜ばれると信じています。
「Bさんに喜んでもらおう」
そう思いながら、使う人の顔をイメージして開発改良を重ねて行きました。今でも、顔の見える機械作りを心掛けています。喜ばれるイメージが湧かないものを作ってもしようがないですからね。
そして、ようやく形になって、製品化の一歩手前まで来ました。社内でもそこまでやるとは思われなかったみたいで(笑)、展示会に出展する機会を頂けました。
自分も職人だったからこそ、持てたこだわり『職人への理解』
展示会では、予想以上の成果が上がりました。何より来場者の方々の食い付きが良かったんですね。手応えという成果を上げて、8CRはついに、製品化に漕ぎ着けました。取り分けこだわっていた点は、扱い易さと馴染み易さです。どんなに高機能でも、職人さんに理解されなければ、それらの機能は活きません。だから、極力無駄を排して、納品したその日からでも使えるように、『職人への理解』を形にすることを追求しました。幸いだったのは、大手が見落としている細かい点に着目したことです。
  • ● 職人の太い指に合わせた、大きめのボタン
  • ● ご年配の方にも見易い、大きめの文字表示
  • ● キーボードの数字は関数電卓と同じ配列
  • ● キーボードにも演算機能
  • ● スイッチ類の配列は汎用機と同じ
  • ● NCを簡単に扱える、独自のガイダンス機能
  • ● 微調整にこだわる職人のために、汎用機と同じ位置にあるハンドル

使う人間でないと、「欲しい機能」「便利な機能」って、分からないんですよ。コストを先に考えると、恐らく今のような形は出来上がらなかったと思います。ボタンは小さい方が良いし、多分、ハンドルも取っ払ってしまった方が、割安になるでしょう。コスト面から考えると、使い易い機械に仕上がらないはずなんです。自分も製造部門に居たからこそ、この形に至ったのだと考えています。
自分たちが、より扱い易い形を求めました。結果として、お客様に喜ばれるものが出来上がったのです。 今でも常に課題はありますが、自分たちよりも上手に使いこなして頂いているお客様がいると、本当に嬉しくなります。
山崎技研流、物作りの考え方『作りたいものを作る』
山崎では、まず作ってみます。一般的には、計画して市場動向を見たりとか、主流な製品を模倣したりして、自社で扱い易いように工夫して行くと思います。恐らくそういう風に製品化に漕ぎ着けるのが、一般的だと思います。しかし山崎では、まず作ります。
なぜかというと、自社での製品管理や、製品の扱い易さを軸に考えると、大抵間違った方向に進んで行くんです。『出来ること』をやろうとしてしまうようになってしまう。メーカーが本当に考えなければいけないことは、『作りたいもの』のことです。役立つもの、稼げるものを作るためには、『作りながら考える』、もしくは『作って考える』でなくてはなりません。
紙の上で考えるよりも、「触って」「使って」、手応えを感じながら考えなければ、良い物作りは出来ない。
お客様に『作りたいもの』を作って欲しい。そのためには、私たちも頭で考えて作っていてはいけないと思います。身体で物作りを感じることです。
『作りながら考える』『作って考える』、それが山崎流です。
本当の喜び『製造冥利』
私たちは、売れるものを作るだけが仕事ではありません。人気製品を作るのは、一つのゴールですが、それだけでは不十分だと思います。やはり、お客様により良く仕事をして頂けるのが、本当のゴールだと思います。そして、さらに稼いで頂くのが、本当の仕事です。
良い物作りをされて、稼いでいらっしゃるお客様にお逢いすると、『製造冥利』に尽きますよね。
これからも多くの製造業者様、職人さんに愛される機械を作って行きたいと思います。